本気で叱る

 小学生の頃、スイミングスクールに通っていました。スイミングスクールは少し離れたところにあったので専用のバスで通っていました。バスの運転手はとてもハンサムで当時のフランスの俳優アランドロン似ていたのでみんなにアランドロンと呼ばれていました。とても優しい運転手でした。スイミングにはクラスメートも何人かいて、いつもみんなでわいわいしながらバスの乗ったものでした。ある日、上級生の堺君がスイミングに入ってきました。堺君は声が甲高く少し知能の遅滞傾向のある子供でした。僕らは調子に乗って田中くんのモノマネなどをしながら、
「田中くん1+1わかる?」といったような質問を幾つもしてからかっていました。
それをずっと聴き耐えかねていたアンドロンは突然バスを停めました。
「いいからお前たちバスを降りろ!」
何が起こったのか理解できないまま僕たちはバスを降りました。
バスを降りると雨が激しく降っていました。
アランドロンは僕たちの首根っこを揺さぶりながら、
「自分が何やってるのか分かるのか?」とすっごく怒って言いました。
後にも先にもアンドロンがあんなに怒っていることはありせんでした。
あの時のアランドロンの表情忘れられません。本当にいけないことをしてしまったんだということがわかりました。
今僕は十分すぎるほどの大人になりました。僕は果たしてアランドロン程の大人になっているのだろうか?いけないことをしている子供に真剣に叱れるだろうか?
アランドロンみたいにイケメンにはなれないけど本当の意味でのイケメンにならにゃいかんと思います。